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人工知能伝習所

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秋の味覚と人工知能 (1):サンマの缶詰には、コンピュータサイエンスの難問が詰まっているかもしれない

今週のブログお題「秋の味覚」に関する記事です。

「秋の味覚」と関連した人工知能の活用事例はないかと探してみたところ、それは意外なところにありました。秋刀魚です。

秋刀魚干物

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(通称、農研機構)のHPに掲載されている研究プロジェクト情報によると、岩手大学水産ロボティクス研究グループが中心となって、地元の水産加工業者らと連携して、「サンマ蒲焼缶詰を事例とした計量・充填作業における熟練作業者ノウハウの人工知能化」の研究が進められているようです。

研究の背景としては、サンマの漁獲量が多い地域は、東日本大震災の被災地域と重なっていて、震災後に急激に人口が減ったために、深刻な労働力不足に見舞われているそうです。そのため、サンマ蒲焼缶詰製造をはじめとする、水産加工場の設備稼働率を高めることが困難になっています。この研究は、労働力不足を解消し、海外製品との競争にも勝てる、革新的な生産性向上の取り組み、という位置づけのようです。

ところで、サンマ蒲焼缶詰製造で、最もボトルネックになっているのが、「定量充填作業」だそうです。これは、決まった重さのサンマを缶詰に充填する作業で、製造工程の30%を占めており、下記の写真のように手作業で行われています。そこで、この工程を、人工知能の力を借りてロボット化し、作業の省力化・自動化を行うことが、この研究の目標です。

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同じ重さになるように充填するといっても、サンマの形や大きさはバラバラなので、様々な組み合わせが考えられます。たとえば、下図の例をみると、組み合わせ(A)では、腹側と尾側の肉が1対ですが、組み合わせ(B)では、腹側と小さな尾側の肉が複数の組み合わせになっています。この研究では、機械学習を使って、熟練作業者による「サンマ蒲焼片」の最適な組み合わせの選定方法を人工知能化しよう、というアプローチをとっています。

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研究の目標を達成するために解決すべき技術課題は、次の4つに集約できそうです。
(1) サンマ蒲焼の重さを計ること。そのために必要な3次元的特徴量を明らかにすること。
(2) サンマの肉を分類すること(くず肉、腹側、尾側)
(3) 肉詰め量を一定範囲におさまるように、組み合わせを最適化すること
(4) 製造現場での実証実験

(1)は、センサーに何を使うか記載されていませんが、ビデオカメラを使うのであれば、2次元の画像からサンマ部分を抜き出して、3次元にモデリングするための技術が必要そうです。

(2)は、典型的な分類/認識問題なので、機械学習が適用できるでしょう。上の画像を見る限りでは、色のスペクトルや、形状を数値化したものが分類のための特徴量として使えそうな気はします。

(3)は、ある意味ナップサック問題っぽいですね。ナップサック問題は、「規定の重量を超えない範囲で、ナップサックに詰め込める価値を最大化する組み合わせを見つける」問題です。もし、ナップサック問題になるのであれば、ソートなどを用いて効率的に解くことが不可能な「NP困難」問題ということになります。ただ、サンマの缶詰を「定量充填」する場合、重さだけ見てればいいならそんなに複雑ではなさそうな気もします。

(4)は、結構難しそうですね。人工知能が最適なサンマの組み合わせを計算で見つけてくれたとして、それをどうやって作業者に伝えるのか。プロジェクタを使ってターゲットとなる組み合わせのサンマの肉片にマークを投影するのだろうか、それとも、メガネ型のウェアラブル端末を使って、サンマの肉片にマークを重畳表示させるのか。あるいは、ロボットハンドで缶に詰めるところまで自動化するのか・・・。妄想はひろがります。

残念ながら現時点では、この研究に関する論文を見つけられなかったので、詳細はわからないままですが、研究の背景、問題の重要性、アプローチの新規性、得られる効果、などを考えると、面白い研究になりそうです。研究者の方々には、是非頑張ってもらいたいですね。