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人工知能伝習所

〜 AI x Big Data x IoTなトピックを、非エンジニアにも分かりやすくお届け 〜

人工知能が上司や部下になる日(2)~人工知能が戦略を作り、創造性を開放し、新しい仕事を創り出す~

未来予測

昨日に引き続き、「MIT Sloan Mnagement Review」の特集「Exploring the Digital Future of Management(マネジメントのデジタルな未来を探る)」から、残りのエッセイの概要をご紹介します。

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Why Digital Transformation Needs a Heart(なぜデジタル・トランスフォーメーションには「心」が必要か)

 George Westerman (MITスローン経営大学院)

技術が主導する3つのデジタルの力が経営の姿を変える
 ・自動化 ⇒ 人間を介さずできる仕事が増える
 ・データ駆動型経営 ⇒ 直感と経験を、データと実験が補完する
 ・リソース流動化 ⇒ ベストな人材を社内外からマッチングできる

3つのデジタルの力の行き過ぎには注意すべき
 ・自動化 ⇒ ロボットによる人員削減へのストレス悪化
 ・データ駆動型経営 ⇒ 従業員の全行動を監視するビッグブラザー
 ・リソース流動化 ⇒ 全従業員を非正規化
うっかりしていると、従業員との関係は無味乾燥なものとなり、長期的に悪影響を及ぼす。

デジタルの力は「ビタミン剤」。正しい量を正しく飲めばすばらしい効果があるが、飲みすぎると副作用が。

デジタル・トランスフォーメーションには「心」が必要。変化の激しい時代を生き残るために、経営者は企業のあらゆる部分を変革する必要がある。しかし、「企業を動かしているのは人」だということを忘れてはならない。

Using Artificial Intelligence to Set Information Free(情報をフリーにするために人工知能を活用する)

 Reid Hoffman (LinkedIn Corp.)

人工知能が経営を「アートとサイエンスの組み合わせ」に変革する。専門AIによって、経営理論とデータサイエンスが融合される。

専門AIの例
 ・IBMのWatson:クイズ番組「Jeopardy」で人間に勝利
 ・Google DeepMindのAlphaGo:囲碁で世界トップ棋士に勝利

先進的な企業は専門AIを使って、大規模で複雑な「ナレッジ・グラフ」を構築するだろう。「ナレッジ・グラフ」は、あらゆるデータやコミュニケーションの結びつきを表現したグラフだ。

これは、ビッグブラザーっぽく聞こえるかもしれないが、知識労働者が情報を収集・理解しアクションをとる際の強力なツールになる。

ナレッジ・グラフの3つの効果
(1)経営ダッシュボードの改善:数値だけでなく、言語や感情も考慮した予測分析
(2)データ駆動型の業績管理:誰がどれだけ業績に貢献したか、定量的に評価できる
(3)人材流動性の向上:新しいスキルや人脈の取得に必要な時間を短くできる

一部の人は、AIが潜在的な脅威になると心配している。そこで、Sam Altma、Elon Musk、Peter Thil、Jessica Livingstonらの友人たちと、OpenAIプロジェクトを立ち上げた。OpenAIは、人類に害をもたらすよりも、有益性をもたらす「フレンドリー」なAIの開発を目指している。

Unleshing Creativity With Digital Technology(デジタル技術で創造性を解き放つ)

 Robert D. Austin (ウェスタン大学アイビー・ビジネス・スクール)

デジタル技術は人々や組織の創造力を高め、新規で価値のあるイノベーションの形成を可能にする。様々な分野で、いわゆる「cheap and rapid iteration(安価で素早い繰り返し)」を可能にしているからだ。

「繰り返し」は、芸術性を発揮させるための一つのプロセスだ。映画、絵画、舞台芸術、製品デザインでは、習作、リハーサル、プロトタイピングが繰り返し行われる。

「繰り返し」が安く早く行えるほど、創造性は増す。しかし、多くのビジネスでは、新しいことの試行は高くつく。

それを可能にする技術は既に実現されている
 ・製造業:CADと3Dプリンタの活用
 ・サービス業:ソーシャルメディアを通じた新規サービスの素早いトライアル

次の5年で、マネージャたちは大きな可能性に気づくだろう。
 ・物理的なトライアルを、仮想的なトライアルで代替させる
 ・仮想実験場、仮想ラボ、安いプロトタイピング設備など
ビジネスにおける「ダビンチ」が作り出されるのだ。

The Three New Skills Managers Need(マネージャが必要とする3つの新スキル)

 Monideepa Tarafdar (ランカスター大学マネジメントスクール)

1. デジタルな「同僚」とパートナーになる

デジタルな「同僚」が、コールセンターで自動応答したり、投資判断をしたり、工場の組み立てラインを管理したり、ダッシュボードで業績に直結する重要指標をアドバイスしてくれたりするようになる。

これらの「同僚」は、特定のタスクに特化して賢くなる機能はあるが、データが増えてアルゴリズムが複雑化するにつれて、現実世界と乖離する「アルゴリズム逃避」の危険がある。

デジタルな「同僚」に、判断の材料となるコンテキストを教えてやり、自分の経験や直感と反する判断に対しては、フィードバックを行っていく必要がある。それは、人間の同僚に対してフィードバックするのと同じ。

2. デジタルでマインドフルになる

リモートで働けるようになって、9時~17時の労働時間の考え方は意味がなくなりつつある。一方、現在のマネジメントのマインドセットはいまだに労働と非労働を切り分けて考えようとする。

労働と非労働の区別に力を割くより、仕事と生活の境界をシームレスにし、意味のあるタスクを連続してフローさせることに技術を使おう。そのほうが、マネージャの生活も生産性も向上する。マネージャは、テクノロジーを活用したマインドフル・リーダーシップを養成することを考え始めるべき。

3. 他人のテクノロジの好みに共感を持つ

深夜にメールを送られると、翌朝、プレッシャーに感じてしまう人もいる。技術利用の習慣や信条は人によって異なる。メールが好きな人、電話や対面でないと嫌な人も様々。

将来の職場環境のデザインでは、技術の好みが似通った人を同じプロジェクトやチームにアサインした方が良い。

Tackling the World's Challenges With Technology(世界の課題に技術で取り組む)

 Andrew S. Winston(コンサルタント、「ビッグ・ピボット」著者)

気候変動、水や食料などの資源の不足など、これまで、政府や公共で取り組むべきと考えられていたソーシャルな課題に企業も取り組むべき、という意識の変化がある。

技術をうまく利用する企業は「強靭な世界」をつくり出す助けとなる。マネージャたちは、IoTとスマートな分析を組み合わせることで、エネルギーや二酸化炭素排出量など、彼らの企業が世界に与えるインパクトをより精緻に理解し、管理できるようになる。

ソーシャルな課題に対して技術が持つ最もインパクトの大きな効果は「透明性」。サプライチェーン上の新しいデータと、何でもシェアする世代の労働者たちによって、企業の行いはすべて世間の目にさらされることになるだろう。

企業の経営方法は深いレベルで変わっていく
 ・株主中心から、より広いステークホルダー中心に
 ・短期的な業績よりも、長期的戦略を重視
 ・経営上の狭いゴールを追うよりも、協力的なシステム思考の採用へ

Digital Today, Cognitive Tomorrow(デジタルな今日、コグニティブな明日)

 Ginni Rometty(IBM Corp.)

企業や政府は、変化へのプレッシャーの下で、素早くデジタル化しようとしている。しかし「デジタル」は最終ゴールではない。もっと深い変化が来る。次の5年で、多くのビジネス判断は、「コグニティブ」技術で強化されていくだろう。

IBM Watsonが人間に勝った理由:
 ・AIとその周辺技術の指数関数的な発展
 ・今まで利用不可能だった多くの非構造データの活用
 ・学習するシステムの実現

今の時代の課題は、「情報過多」ではなく「コグニティブ過多」。意思決定の複雑性が指数関数的に増しているのだ。

コグニティブシステムは既にすべてを変化させ始めている。例えば、ニューヨークのがんセンターとの共同研究では、「コグニティブな腫瘍学」が実現できた。これにより、大量データを基にして、がん専門医が、パーソナライズされたエビデンス・ベースの治療選択肢を選べるようにした。

技術の発展によって、なくなる職業もあれば、生み出される職業もある。コグニティブシステムは既に、新しい科学知識の分野を生み出し、新しい職業を生み出している。

データは新しい「資源」。かつて、蒸気、電気、化石燃料がそうしてきたように、21世紀を動かす力である。コグニティブ技術によって、知識増幅(IA)――AIとは逆のつづり――が人間の働き方、意思決定の方法、組織の管理方法を変えていく。

Rise of the Strategy Machines(戦略機械の台頭)

 Thomas H. Davenport(バブソン大学)

機械が車の運転や製造ロボットなど、いろんなことを自動化しているが、「戦略を生み出す」機械はまだできていない。例えば、コンピュータに自動車会社の「新しい移動手段の戦略を考えて」と頼んだりしない。

今のところ戦略立案では人間の方が優れている。しかしだからといって、あぐらをかいてはいられない。その理由は3つ。
 ・人間だって判断を誤る。M&Aの失敗、売れない新製品、勝ち目のない地域への参入など
 ・特定領域なら機械でも良い判断ができる。IBMでは買収ターゲットの評価をアルゴリズムにやらせている。Netflixでは、どのTV番組を配信すべきかの決定に予測分析を使っている。
 ・大手のコンサル企業でも戦略を生み出す機械への検討や投資が始まっている。例えば、Martin Reeves、Daichi Ueda、McKinsey&Co.、Deloitteなど。

人間の戦略家はどうすればいい?
 ・自動運転車で人間が運転する部分が残るように、戦略策定も自動化できない部分は残る
 ・ビッグピクチャーを描くのはまだ人間の方がうまい
 ・自分の思考をコグニティブ技術に埋め込むのもよいが、もっと広く世界を見よ