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人工知能伝習所

〜 AI x Big Data x IoTなトピックを、非エンジニアにも分かりやすくお届け 〜

人工知能とは何か?(1)人工知能学会&情報処理学会が共同企画

昨今の人工知能ブームに応えるカタチで、人工知能学会情報処理学会がお互いの学会誌の特集を共同企画しています。人工知能研究の第一線の研究者からみた人工知能ブームの喧騒や、研究の現場での感触、今後の研究動向を知る上で貴重な特集になっています。どちらかの学会に入会していれば学会誌が送られてくると思いますが、入会していなくてもAmazonで買えますので、興味がある方はどうぞ。(「情報処理」の方が安いかな...)

情報処理 2016年10月号

情報処理 2016年10月号

人工知能 Vol.31 No.5 (2016年09月号)

人工知能 Vol.31 No.5 (2016年09月号)

特集は3部構成です。
第1部は両学会誌の編集長の対談を通じた「人工知能ブーム」に関する四方山話
第2部は11名の研究者による専門領域の動向のエッセイ集
第3部は人工知能のホットトピックとして、「汎用人工知能」と「人工知能と倫理」
といった内容になっています。

本日は、第1部について、面白かったポイントや補足したら良さそうな情報をピックアップしていきます。

対談のタイトルは「情報処理と人工知能」。前人工知能学会誌編集長の栗原聡先生(電通大)、情報処理学会誌編集長の塚本昌彦先生(神戸大)のお二方の対談で、聞き手を角康之先生(公立はこだて未来大)、長野徹氏(日本アイ・ビー・エム)がつとめられています。

まず、角先生が最初に放った質問「人工知能が流行ってますが、次の冬の時代はいつでしょう(笑)」の好感度が高いです。これまでも、第一次、第二次人工知能ブームと、その後の冬の時代が繰り返されてきたことをふまえた質問であり、今の第三次ブームが一過性のものなのか、それとも、何か本質的な変化を引き起こすインパクトを含んでいるのかを問うています。

それに対する結論は、今までの人工知能ブームのようにシュリンクするのではなく偏在化していくだろう、となっています。原因は、「環境とユーザ」が違っているから。つまり、ビッグデータGPU、簡単にアプリを作れる環境があるため、技術を「生み出す人」より「使う人」が盛り上がっているからだ、とのこと。「ベンチャー企業がアクティブで、商談がどんどん成立している」とも。景気のいい話だな〜。すごい。

シュリンクしないのだったら、第三次人工知能ブームの後は冬の時代は来ないということ?と思ったら、角先生がさらにツッコミます。「第二次人工知能ブームでは、知識表現の難しさにケチがついた。今回のディープラーニングにケチがつくとしたら、どこか?」と。

ケチがつくとしたら、「人知を超えてしまった人工知能の思考プロセスを人間が理解できず、不安や不気味に思ってしまう」ということのようです。うーん、個々のパラメータの説明はできないかもしれないけれど、ディープラーニングを使った意思決定システムで、「意思決定の過程を、人間にも理解可能なロジックと自然言語で説明するタスク」を設定したら、それなりにこなせてしまうんではないかと思ってみたりします。

全体を通して、そんなに異論がぶつかりあったり侃々諤々の議論になったりはせず、終始なごやかな雰囲気で対談は進んでいきます。それでも、第三次ブームに対して少し冷めた視点での発言もあれば、本質的な変化かもしれないと思っていることをにじませる発言もあり、バランスのとれた対談だと思いました。

特に、各先生方の下記のコメントは、本質的な変化に対する危機感が見え隠れしていて、とても興味深く読ませていただきました。

人工知能が書いた論文を人間が理解できないからリジェクトされてしまい、数年後に、やはりそれは正しかったということが起きるかもしれません。

栗原:僕らが扱うべき情報がどんどん多様化してきて、複雑化して、人工知能が結構妥当なアイデアを出してくれると、意外と僕らのような研究職は危ない(笑)

塚本:私は今のディープラーニングでできる部分は、結構人間にとって重要な部分で、多くの人の職業がそれで置き換えられてしまう可能性があるというところだと思っています。つまり、単なる分類とかいう言い方ではなくて、人類にとって非常に本質的な影響のある部分をガツンと攻められた、というイメージを持っています。

あと、対談の中で出てきた下記の2つの話は、面白そうなのでもう少し掘り下げて調べてみたいです。

ひとつ目は、ソニーCSLの北野宏明所長が、「人工知能ノーベル賞級の科学的発見をさせる」というグランドチャレンジを提唱しておられるところ。ざっと調べてみると、人工知能学会誌への寄稿や、人工知能学会でも講演されている様子。

ふたつ目は、総務省情報通信政策研究所からの報告で、「野良ロボットが徒党を組んで参政権を要求する可能性がある」等の人工知能のリスクを分析していること。元の報告書はこれか。