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人工知能伝習所

〜 AI x Big Data x IoTなトピックを、非エンジニアにも分かりやすくお届け 〜

リーンスタートアップでIoTプロジェクトを成功に導く方法

はじめてのIoTプロジェクトの教科書

はじめてのIoTプロジェクトの教科書

2020年には1.7兆ドル規模にまで成長すると予測されているIoT(Internet of Things:モノのインターネット)市場ですが、ガートナーによると、国内ではそれほど導入は進んでいないようです。

確かに、Raspberry Piでリアルタイムに温度/湿度やトイレの混み具合を可視化してみたはいいものの、このあとどうするんだっけ?という感触の方も多いのではないでしょうか。あるいは、会社の上司に「ウチもIoTで何かできないの?」と言われたはいいけど、どんなアイデアを出せばいいのか分からない...といった悩みもあるのではないでしょうか。

そんな、悩めるエンジニアには、下記の本がヒントを与えてくれるかもしれません。
はじめてのIoTプロジェクトの教科書

株式会社エスキュービズム・テクノロジー代表取締役・武下真典氏と、株式会社ブープラン代表取締役・幸田フミ氏の共著によるIoTプロジェクトの企画から、設計/試作/検証/導入の進め方を指南した教科書です。

IoTに詳しい大学教授の元に、コンサル会社の女社長(おそらく幸田フミ氏がモデル)と新人さんが相談に来るという設定の会話形式で、わりとくだけた文章でカジュアルに話が進みます。

本書の前半の部分は、IoTの基礎的な話を雑談形式で進めているため、話が散発的になってしまっていますが、後半でスマホ連携ロッカーを作り始めるあたりから俄然面白くなります。実際に商品化されたスマート宅配ボックスの事例がベースになっていて、リーンスタートアップの考え方を取り入れながら、試作品を作っては評価し、作っては評価し、を繰り返しながら、付加価値が出せる場所とビジネスモデルを見つけていく過程は、とても興味深く読ませていただきました。

IoTプロジェクトでも、従来のITシステム構築と工程自体はそんなに変わらないのですが、IoTの世界では、「ITと連携するモノ」を作るというプロセスが入ってくるため、難易度があがります。最初は段ボール箱でプロトタイプを作って、コンセプトや使用感を確かめるあたりは、Webサイトのペーパープロトタイピングと似たようなものですが、実際に「宅配ボックス」というカタチにするためには、ロッカーを製造している業者に発注する必要があります。ところが、ここで「モノの製造者は必ずしもITに詳しくない」というカベが立ちはだかるのです。そのため、「モノとITの連携」部分がグレーゾーンになり、最適な連携方法ができなくて「次善の策」を考える必要が出てきたりするわけです。

また、試作品ができてからも、屋外の使用に耐えうるか試験するために水をかけたり、暴力的な方法でこじあけられないか試験するために殴ってみたりと、「物理的な試験」を結構こなす必要があります。これは、ITシステムの導入プロセスではあまり必要がなく、最近ではシステムテストは相当な割合で自動化されている流れの中で、IoTの「モノ」の部分のテストに、結構課題と苦労が残っている雰囲気を感じました。

とはいえ、当初「スマート宅配ボックス」のつもりで作ったものが紆余曲折を経て、まったく想定していなかった「空港のWiFiルータ貸出し用ロッカー」に落ち着くくだりは、リーンスタートアップならではのダイナミズムを感じるエピソードでした。持つべきものは人脈と雑談力ですね。